「知の探索」と「知の深化」の両利き

近年、最も研究されているイノベーションの理論は、「両利きの経営(ambidexterity)」です。両利きとは、「知の探索」と「知の深化」を高次元にバランスよく取る経営という意味です。「知の探索」とは、知の範囲を広げるということです。イノベーションの父と呼ばれるジョセフ・シュンペーターの有名な考え方に、「イノベーションの源泉の一つは、既存の知と、別の既存の知の、新たな組み合わせである」というものがあります。企業やビジネスパーソンは、様々な知を組み合わせることで新たなアイデアを生むため、知の範囲を広げる必要があるのです。私たちは「強いつながり」を重視しがちですが、実は新しい知を生み出すには、弱いつながりのほうが適している、ということが経営学の研究で示されています。人間のつながりをネットワークとして見ると、弱いつながりのほうが簡単につくれるので、遠くに伸びやすい。遠くに伸びたら、多様な情報が効率的に届くのです。この弱いつながりをつくるのは、好奇心旺盛で行動力がある「チャラ男」タイプの人材です。

 

入山章栄氏のコラムより.