転勤や配置転換を甘受するのは,終身雇用との交換条件

日本の会社は,終身雇用と引き換えに,正社員に対して絶対的な権力を持つことができるのです.日本の裁判所は、解雇については労働者の味方ですが,転勤や配置転換などを不服とした訴えにはきわめて厳しい態度で臨みます.「生活の面倒を見てもらっているのだから,多少理不尽なことをされてもガマンしなさい」というわけです.最低賃金や有給など,法に定められた最低限の労働条件を満たしていれば,会社は正社員に対してどんな無理な要求をしても許されるのです.ところがここ数年,会社と正社員のこの歪な関係を利用した新しいビジネスモデルが登場してきました.飲食やアパレルなど多数の働き手を必要とする業界で,新卒を大量に正社員で採用し,最低賃金サービス残業で徹底的に酷使すれば,アルバイトを時給で雇うよりずっと人件費コストが安いことが発見されたのです.
橘玲氏のコラムより.