説得なのか威圧なのか

自分の言葉を差し出すときに,相手にそれをほんとうに聞き届けて欲しいと思ったら,私たちはそれにふさわしい言葉を選ぶ.たいていは,低い声で,ゆっくりと,笑顔をまじえ,相手をリラックスさせ,相手のペースに合わせて,相手が話にちゃんとついてきているかどうかを慎重に点検しながら,しだいに話を複雑な方向にじりじりと進めてゆく.他人を怒鳴りつける人間は,目の前にいる人間の心身のパフォーマンスを向上させることを願っていない.彼はむしろ相手の状況認識や対応能力を低下させることをめざしている.人間が目の前の相手の社会的能力を低下させることによって獲得できるものは一つしかない.それは「相対的な優位」である.
内田先生のコラムより.大声で叱る人は,見栄っ張りなだけなのかも.