マルクス主義と大人

マルクス主義へ人を向かわせる最大の動機は「貧しい人たち,飢えている人たち,収奪されている人たち,社会的不正に耐えている人たち」に対する私たち自身の「疚しさ」です.苦しんでいる人たちがいるのに,自分はこんなに「楽な思い」をしているという不公平についての罪の意識が「公正な社会が実現されねばならない」というつよい使命感を醸成します.共同体はそのメンバーのうちで,もっとも弱く,非力な人たちであっても,フルメンバーとして,自尊感情を持って,それぞれの立場で責務を果たすことができるように制度設計されなければならないと思っているからです.それは親族や地縁集団のような小規模の共同体でも,国民国家や国際社会的のような巨大な共同体でも変わりません.十分な能力があり,知恵があり,周囲から十分な敬意や信頼を得ている者は,その持てる資源を自己利益のためではなく,かたわらにいる弱く,苦しむ人たちのために用いなければならないと考える「大人」が必要です.
内田先生のコラムより.自分のことだけを考える「大人」は要らん.