日本の持ち味は,「全員が全体の一端を担う」「全員経営」

菊池が言うところのアメリカの「持ち味」は,大きな対象を機能に分解して,それぞれに専門家を当てて,大所高所で計画を立てて実効したうえでそれを事後的に統合するというやり方だ.日本では,黒澤明も,北野武も,ハリウッドのような映画づくりはしない.一人ひとりが個別の機能ブロックに分かれるのではなく,表面的には担当の仕事が違っていても「要するにこれは何なのか」を考えながら仕事が進む.完成した作品丸ごとに対して人びとがコミットする.ジョブ・ディスクリプションに書いてあることは完璧にやりますが,書いてないことは一切しませんということではない.「全員が全体の一端を担う」のである.たとえばユニクロで言う「全員経営」.これは「全員で顧客にユニクロの価値を伝えていこう」という大方針である.この点がジョブ・ディスクリプションでガチガチに固められた店員が顧客接点の最前線にいる「グローバル企業」との差別化の源泉になる,という発想である.
楠木建氏のコラムより.