歴史的構想力(ヒストリカル・イマジネーション)

先の6つの能力に加え、複雑性がますます増している現代の企業社会を勝ち抜くためには、時間軸や空間軸を見据えながら、事象の関係性を洞察できる高質な構想力が必須となる。それを「歴史的構想力(ヒストリカル・イマジネーション)」と言い換えることもできる。歴史家は、過去の事実と自らの想像との間を往還し、歴史のあるべき姿をシミュレートしながら、大きな歴史の流れを紡ぐ。そのときに必要なのが歴史的構想力だ。一方、歴史家ではない一般のリーダーは、現在の事実に基づいて未来のあるべき姿を思い描き、現実を常に過去としながら未来をつくっていく。現在は過去の延長にほかならないから、視線の先が過去か未来かの違いだけで、その行為は一流の歴史家と似通っている。つまり、未来を創造するリーダーにも歴史的構想力が必要であり、それがあれば鬼に金棒となるのだ。

野中郁次郎氏のコラムより.